1. はじめに
早期の胃腫瘍に遭遇することの多い本邦では、胃からESDを始めることが多いと思われる。麻酔係や外回りを経験し、ESDに関する機器の特徴など十分理解し、上級医の助手を務め、数か月したころに突然胃のESD術者を振り分けられる・・この流れが最も多いパターンではないだろうか。筋層も厚く、簡単には穿孔しないため、最初の症例は前庭部病変であることが多いと思われる。しかし、簡単と思いきや、スウィートスポットから少し外れると内視鏡操作は不安定で、胃ESDは初学者にとってそう簡単にはいかないことが多い。特に出血のコントロールの面で、初学者は最初の壁に当たる。
筆者は、今の施設に移ってから、ほぼ初学者の若手2人にESDトレーニングを始めることになった。色々考えた末に出した結論は、「胃に限定せず大腸や食道も並行して行わせる」というものであった。ただし、条件として1年間はpocket-creation methodで行い、先端系ナイフとSTフード(富士フィルム社)を用い、ナイフの出し入れは上級医(筆者)が行うことを条件とした。そして極力Underwaterに慣れてもらう方針とした。数例とはいえ、ほぼ独学で他のデバイスでのESDを行っていたようなので、最初はかなり戸惑いが感じられた。なんとなく上手くいくことはあっても、上手くいかないときには必ず理由がある。上手くいったときは褒め、上手くいかなかったときに個々の症例で議論を交わし、1年間は同じ方法で行っていただいた。この1年間は基礎を固める時期になる。ゴルフでいうとフォームを固める時期である。この時期が抜けてしまうと、ある程度までは道具が助けてくれても、難症例では頭打ちになるからである。まさに我慢の1年間である。2年目からは場面によって他のナイフや牽引デバイスも許可したが、たいていの症例は同じ治療戦略と道具でことが足りるので、不思議と治療戦略がぶれることは無くなった。
管腔が広く、出血が多い(出血させないのも技量の一つであるが)臓器である胃の方が、他の臓器と比較して独特と筆者は考えている。安全の担保は重要であるが、今後は当たり前のように大腸でのESD研修を始める時代が来るのかもしれない。
2. 前庭部~胃角~体下部小弯の胃ESDについて
本章では、萎縮の進展から考えると、比較的遭遇する機会が多くかつ初学者ではしばしば難渋する前庭部小弯~胃角小弯~体下部小弯の病変に対するESDについて解説する。
胃は管腔の大きな臓器であるので、まずアプローチを整理したい。ガスが多い時点では腫瘍の大半は見下ろし像では確認できないので、通常は反転することが多いと思われる。しかし、特に胃角小弯の反転像ではナイフと筋層は垂直に対峙することになる。胃の形にもよるが、ガスが多いと近接困難な状況も起こりやすく、push操作で近づこうものなら、鎮静下ESDでは患者の体動も増えることになり悪循環である。
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