記事のポイント
- H.pylori除菌前の感染診断にはなるべく抗原検査で確認をしましょう。
- 除菌判定では、内服から期間を空けて尿素呼気試験、便中抗原で確認をしましょう。
- PPI/P-CAB、抗菌薬内服中には偽陰性のリスクがあり、注意が必要です。
H.pylori感染診断
H.pylori感染症の診断方法には、除菌治療前に行う感染診断と除菌治療後に行う除菌判定があり、それぞれ適切な検査法を選んで行う必要があります。また採血や内視鏡を用いる侵襲的な検査と尿、便等を用いる非侵襲的な検査法にも分けられます。
ここではまずH.pylori感染診断の各検査方法について解説したのち、初回診断および除菌判定に用いるべき検査法について述べていきたいと思います。
H.pylori感染診断と除菌判定の推奨検査法
除菌前の感染診断:便中抗原、迅速ウレアーゼ試験、組織鏡検、血清H. pylori抗体、尿素呼気試験
除菌判定:尿素呼気試験、便中抗原
除菌前の感染診断はなるべく抗原検査を行う方が望ましいと思います。また除菌判定は感染後に陽性が持続する検査法も多いため注意が必要です。
詳細は以下の検査方法各論に記載します。
H.pylori感染診断の検査方法
- 血清H. pylori抗体:採血検体を用いて、IgG抗体を測定する方法です。過去感染でも陽性となり、除菌後も長期間で陽性が持続します。つまり血清抗体陽性は現感染のみを反映するものではないため、除菌治療については複数の結果から総合的に判断する必要があります。また同様の理由により除菌判定には不向きです。
- 尿中抗体:尿中に排泄される抗H. pylori IgG抗体を検出する免疫学的検査です。菌そのものではなく、抗体を測定しています。非侵襲的な検査であり、感度、特異度は85-95%程度です。除菌後も数ヶ月~数年陽性が持続しますので、除菌判定には不向きです。PPI/P-CABの影響はありません。
- 便中抗原:便中に排泄された H. pylori抗原(主に菌体蛋白) を抗体で捕捉する免疫学的検査です。感度、特異度とも90-95%程度と高く、現感染の診断、除菌判定のいずれにも用いられます。ただし、水様便は抗原が希釈されることによる偽陰性のリスクがあります。国内のキットではPPI/P-CABの影響はすくないとされるが、抗菌薬については4週程度の休薬したうえで検査するのが望ましいとされています。
- 尿素呼気試験:13C尿素を内服し、呼気中の13CO₂を測定する方法です。感度・特異度ともに最も高い検査であり、現感染の診断、除菌判定のいずれにも用いられます。ただし、PPI/P-CAB内服中は偽陰性のリスクがあり、2週間以上休薬したうえで検査を行う必要があります。また抗菌薬についても4週程度の休薬したうえで検査するのが望ましいとされています。
- 迅速ウレアーゼ試験:胃粘膜生検組織を用い、H. pyloriの産生するウレアーゼ活性を検出する方法です。1時間程度で判定可能であり、感度・特異度ともに高いですが、PPI/P-CAB内腹中や抗菌薬内服中は偽陰性に注意が必要です。また除菌後には感度のばらつきが大きく、除菌判定には推奨されません。
- 組織鏡検:胃粘膜生検組織を用い、HE染色、Giemsa染色などによって菌体を直接確認する方法です。潰瘍底や再生上皮、腸上皮化生、上皮性腫瘍にはH.pyloriが認められないため、生検採取部位としては避ける必要があります。胃炎の程度(萎縮や腸上皮化生)も同時に評価可能ですが、PPI/P-CAB内服中は菌量の低下による見逃しのリスクがありますので注意が必要です。
- 培養検査:胃粘膜生検組織を用います。除菌に用いる抗生剤の感受性試験が可能です。
- 胃液PCR:胃液を用いて菌の遺伝子を検出する方法です。
PPIやP-CAB内服時の注意点
PPIやP-CAB内服時は胃内のpH上昇、H.pylori菌量低下やウレアーゼ活性低下により、感染診断の検査が偽陰性となることがあります。
特に、尿素呼気試験、迅速ウレアーゼ試験は偽陰性の可能性があるため避けたほうがよいと思われます。
参考文献
1)「H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2024改訂版」(編集 日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会)先端医学社.2024