ESDにおける消化管創閉鎖のエビデンスについて

ESDにおける消化管創閉鎖のエビデンスについて

テキストコンテンツ ESD後 創閉鎖 十二指腸 大腸
読了時間:約54分
港 洋平 先生
港 洋平 先生
NTT東日本関東病院 消化管内科
目次

ESD後の粘膜欠損部は人工潰瘍として治癒過程をたどるが、その過程において後出血、遅発性穿孔、post-ESD coagulation syndrome(PECS)などの偶発症が問題となる。特に抗血栓薬内服例では後出血リスクが高く、十二指腸病変では壁の薄さや胆汁・膵液曝露を背景として遅発性穿孔や後出血が重篤化しやすい。また、大腸ESDにおいても、直腸・直腸S状部病変や大型病変、抗血小板薬内服例などは後出血リスク因子として報告されている1-5)

ESD後創閉鎖の臨床的意義について、Kobaraらは2022年3月までの約10年間に報告された胃・十二指腸・大腸ESD後粘膜欠損に対する予防的内視鏡閉鎖の成績を包括的に整理している6)。同レビューでは、胃・十二指腸・大腸のいずれにおいても創閉鎖が後出血低減に寄与し得ること、さらに十二指腸では遅発性穿孔の低減にも有用であることが示された。一方で、創閉鎖の有用性は臓器、病変部位、患者背景、閉鎖方法、完全閉鎖の成否によって大きく異なるため、全臓器を一括して論じるよりも、臓器別に整理することが重要である。

また、同レビュー以降もESD後創閉鎖に関する報告は増加しており、単なる閉鎖の可否や技術的成功率にとどまらず、抗血栓薬内服例などの高リスク群における臨床的有用性、完全閉鎖の意義、新規クリップや糸付きクリップを用いた閉鎖法、縫合系デバイスの有用性などが検討されている。したがって、現時点では、既存レビューで示された臓器別の基本的な考え方を踏まえつつ、その後に蓄積された新たなエビデンスを加味して、胃、十二指腸、大腸の順に整理する。

胃ESD後創閉鎖

胃ESD後創閉鎖の主な目的は、遅発性穿孔予防よりも後出血予防にある。胃ESD後の遅発性穿孔の頻度はもともと低く、現時点では創閉鎖による遅発性穿孔予防効果は明確ではない。一方、胃は壁が厚く内腔も広いため、粘膜欠損部の閉鎖そのものに加えて、閉鎖を長期間維持することが難しい臓器である。したがって、胃ESD後創閉鎖では、単に欠損部を寄せるだけでなく、閉鎖の強度と持続性をいかに確保するかが重要となる。

胃ESD後創閉鎖に関しては、通常クリップ、留置スネアを併用した方法、O-ringを用いたendoscopic ligation with O-ring closure(E-LOC)、糸付きクリップやreopenable-clip over-the-line method(ROLM)、OverStitch、endoscopic hand suturing(EHS)など、さまざまな閉鎖法が報告されている。既報では結果にばらつきがあり、従来のクリップや留置スネアを用いた閉鎖では後出血予防効果が明確でない報告もある。一方で、近年ではより強固な閉鎖法を用いた検討が報告されており、胃ESD後出血のリスクを低減できる可能性が示されている。

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